アレルギー科
アレルギーVS生活習慣病
大人には、メタボ・肥満・高血圧・高脂血症・糖尿病・痛風などの”生活習慣病”が多いと思います。
それでは子どもではどうでしょうか?(※幸いこれらの病気乳幼児にはほとんどありません。)
それでは子どもに多いのは何でしょう?
『子どもに多いのは』
かぜ、中耳炎・副鼻腔炎、結膜炎・ものもらい、気管支・肺炎・喘息、
胃腸炎・虫垂炎・便秘・腸重積、湿疹・ジンマシン・とびひ・水イボ・アトピー性皮膚炎 などなど。
また重篤なヒブ、肺炎球菌などの髄膜炎、ヘルペス脳炎、けいれんも有ります。
どうやら ”生活習慣病” はなさそうですね??? 本当に!?
『乳児湿疹ありがちの経過』
生まれた直後のあかちゃんは胎脂という脂肪におおわれてベトベトして匂いもします。
このため、あたたかい湯と石けんを用いて沐浴が行われ清潔な皮膚にしてから父・母と対面することになります。
その後退院してからも、自宅で毎晩、あったかな湯で沐浴し、赤ちゃん用石鹸を用いて全身洗われる日々が続けられます。
1ヶ月健診の頃、皮膚のガサガサ、発赤が目立ちはじめ、皮膚科・小児科を受診し”乳児湿疹”と診断され、軟膏を処方されます。数日塗ってみると、きれいに治ります。一件落着です?
しかし2ヶ月頃、治ったと思って塗るのをやめてしばらくすると、再び悪化して、一進一退が繰り返され完治しません!
炎症を起こした赤いガサガサの皮膚はさらに広がり、悪化し、”アトピ一性皮膚炎”と診断されます。
予防接種も進み、5ヶ月頃離乳食がはじまります。米粥から始まり小麦、大豆など追加されます。卵を食べるころ奇妙な事が起きます。口周囲・頬・首・肩・体幹に赤いブツブツが出てしまいます。腕や腿の皮膚もガサガサで痒そうです。嘔吐・下痢・血便が起きる事もあります!?夜泣きがひどく眠らない!落ち着きがない!笑わない!これではお母さんも睡眠不足になります。これらは鶏卵アレルギーの症状なのです。そして、アレルギーマーチの入り口です!
最新の研究
2008年、英国の小児科医Lackが図①を提唱しました。
その後、各国でいくつものアレルギー予防の試みがなされましたが、その中で日本の”PETITスタディ”が注目されています。
この研究には、【6ヶ月~1オまで微量の加熱卵を毎日食べ続けた児のアレルギー発症率は、プラセーボのカボチャを食べた37%に対し、8%と有意に減少していた】(37-8)÷37×100=83% → つまり83%アレルギーの発症を防止できたということが述べられています。(※研究の間、経皮感作が起きないように全ての児は皮膚を管理されました。)
図①
実は2~5ヶ月の頃、ガサガサで赤くなった皮膚の下では、ランゲルハンス細胞、T・Bリンパ球などが卵に対してアレルギーを起こすように”経皮感作”が始まっていたのです。この結果、離乳が始まり卵が口から与えられた時にアレルギー反応が起きて、皮膚に赤いブツブツが出てしまったのです。そしてこの後、皮膚と肺で牛乳、大豆、ピーナッツ、そば、魚介類、ハウスダスト、ダニ、花粉などが、次から次へと感作され続け”アレルギーマーチ”が進んでしまいます。(図②)
図②
『最初の原因は乳児湿疹??!!防ぐ方法は?!』
前述したありがちな乳児湿疹。赤ちゃんの入浴法を、多くのこ両親からお聞きしたところ次の様な実態がわかってきました。
『毎夕 入浴時間10~20分 湯温39~41度 まず全体に湯をかけたのち、全身に泡石鹸を使い全身をきれいにしています』と!
当院に、夕方来院するあかちゃんの皮膚を見てみると、とても清潔で油性汚れなどありませんが、しかし今夜のお風呂は?と問うと『いつもの様にしっかり入浴させます!』と答えます。
これでは少しずつ健康な皮膚を乾燥させ、赤く炎症を起こさせて行くばかりです。
この入浴法を変更することにより、アトピー性皮膚炎の”増悪スパイラル”から脱け出せると思います。
皮膚のバリヤ機能を守る!!
治療として、保湿剤を毎日全身に塗り続ける事も大切ですが、これは対症療法・応急処置に過ぎません!
『根本原因を断つ!』ことが重要です。
皮膚を乾燥させてしまう行為すべて中止し、”適切な入浴・スキンケア”を身に付ける事が真の治療だと考えます。
過剰な洗浄を繰り返す習慣が、アトピー性皮膚炎の原因だと考えられます。
この観点より、アトピー性皮膚炎はこどもの『生活習慣病』であると言えます。
アレルギーを防ぐ育児法
最良の育児法は、具体的には
①乳児期の無病の時期にしっとりとした健康な皮膚を保ちつつ
②卵を含めた離乳を順調に進めていく となります。
これを実践できれば
①経皮感作を防ぎながら
②免疫寛容を確立させる 事が可能となります。
この様に最初は小さな症状ですが、将来 ”アレルギーマーチ” に進展して行きます。”小さな前兆”を見逃さずに、将来起こるであろう病気を事前に予知し、未病→発病へと進めず、健康なお子様を育てられるよう、日々小児科医としてお手伝いしたいと考えています!